後世に芸術作品を脈々と残す!絵画修復技術を体験
大阪・関西万博 欧州連合 EU パビリオン
~数百年前の唯一無二の顔料を落とさず、蓄積汚れだけを落とす~
美を通じてよりよい世界の実現を目指している株式会社 資生堂が、意外な分野でその技術力を発揮しています。欧州連合(EU)が主導する国際共同研究プロジェクト「GREENART(グリーンアート)」に参画し、なんと化粧品開発で活用する乳化技術を用いて、貴重な文化財の修復に取り組んでいるのです。

(左)イタリア フィレンツェ大学 名誉教授 ピエロ バリオーニ氏
(右)株式会社資生堂 みらい開発研究所 博士(東京理科大学 客員准教授)小倉 卓氏
大阪・関西万博で披露! 日本と欧州の知恵が結集した修復技術
2025年5月3日(土)~5日(月)、大阪・関西万博のEUパビリオンにて、その取り組みの一端が公開されました。資生堂は東京理科大学と連携し、日欧のパートナーシップのもと、絵画修復技術のデモンストレーション(体験含む)を実施し、その技術を応用した化粧品を紹介。来場者は、普段なかなか触れることのない絵画修復の世界を垣間見ることができました。

体験はレプリカを使用し、顔料を落とさず、
表面上の蓄積汚れのみを落とします
スポンジの汚れが絵画の蓄積汚れです

絵画修復技術と同じ乳化技術を活用した化粧品の紹介


実際にアイシャドーを乳化技術を用いたクレンジングで落とします
ブースでは、実際に絵画修復を体験できるコーナーや、修復技術を応用したスキンケア化粧品の体感も行われ、多くの注目を集めました。
1872年の創業以来、その時代の美を彩ってきた資生堂は、アートとサイエンスの融合による新たな価値創造に挑戦し続けており、今回の出展では、東京理科大学による電気化学・分析化学の知見を活かした絵画分析技術や、科学的根拠に基づいた修復手法の実演が行われ、来場者にとってはアートと科学が交差する特別な体験となった。
なぜ化粧品メーカーが文化財修復に? その背景にある熱い想い
歴史的な芸術作品は、単なる過去の遺物ではありません。それは、私たち人類の文化や歴史を未来へと繋ぐ、かけがえのない宝物です。しかし、これまでの文化財修復技術は、専門の職人に頼らざるを得ない部分が多く、技術の標準化や安全性、そして環境への負荷といった課題も存在していました。こうした背景から生まれたのが、EU主導の国際共同研究プロジェクト「GREENART」です。資生堂は、このプロジェクトに2024年6月から参画。「肌という“キャンバス”を守る」という化粧品開発で培ってきた視点を活かし、科学の力で文化財を未来へと繋ぐという、新たな価値創造に挑んでいます。
資生堂のDNA。「Art & Science」が拓く未来
資生堂には、DNAのひとつとして「Art & Science」という言葉が脈々と受け継がれています。それは、常に最先端の美意識(Art)と科学技術(Science)を融合させ、ユニークで新しい価値を提供したいという想いの表れです。 「GREENART」の取り組みは、まさにこの「Art & Science」を体現するもの。得意とする乳化技術、特に微細な粒子を安定させるマイクロエマルション技術を応用することで、長年蓄積した汚れだけを優しく除去し、数百年前の貴重な顔料を守りながら文化財を修復することを目指しています。さらに注目すべきは、この文化財修復の過程で培われる技術が、未来の化粧品開発にも応用される可能性があるということ。数百年前の顔料を守る繊細な技術は、肌に必要なうるおいを残しながら、不要な汚れだけを取り除くスキンケア製品の開発へと繋がるかもしれません。


時を超えて、美しさを未来へ
今回の万博での展示は、資生堂の革新的な取り組みを一般の方々が体験できる貴重な機会となりました。文化財という過去の美と、未来の肌の美しさ。一見異なる二つの領域が、資生堂の技術によって結びつき、新たな可能性を生み出そうとしています。


働く女性にとって、「美」は自分自身を大切にするための大切な要素。資生堂の挑戦は、文化財を守るという壮大なテーマでありながら、私たちの未来の美しさにも繋がる、希望に満ちたストーリーといえるでしょう。